補足6 行列式の定義
1. あるn次正方行列Aˆ
の行列式|Aˆ|と余因子行列Aˆ˜を用いて ˆ˜
AAˆ=|Aˆ|Iˆn (108)
と書ける(定理4.13). もし,行列式が0出なければ, 逆行列は
Aˆ−1= ˆ˜ A
|Aˆ| (109)
と書ける.
行列式は以下の理由で重要である.
• 行列式が0かどうかは逆行列の存在は同値である(定理4.10).
• 余因子行列も行列式で書けるため,逆行列は行列式のみで表すこと ができる. 式変形で便利な場合がある.
• 行列式は 多変数積分の変数変換 で重要な役割を果たす.
以上の理由から必ず計算できるようになる事.
2. 行列式の簡単な例
• 2次の正方行列Aˆ =(aij)
Aˆ= (
a11 a12
a21 a22 )
(110)
のとき行列式|Aˆ|は
|Aˆ|=a11a22−a12a21 (111)
• 例
2次の正方行列
Aˆ= (
1 2 0 1
)
(112)
の場合
|Aˆ|=a11a22−a12a21= 1×1−2×0 = 1 (113)
3. 正確な行列式の定義
• n次の順列σを σ=
(
σ(1) σ(2) . . . σ(n) )
(114) とする.
• n次の順列の符号をsgn(σ)とする.
• 全てのn次の順列の集合をPnとする.
このときn次正方行列Aˆ
Aˆ=
a11 a12 . . . a1n
a21 a22 . . . a2n ... ... . .. ... an1 an2 . . . ann
(115)
の行列式|Aˆ|は
|Aˆ|= ∑
σ∈Pn
sgn(σ)
∏n i=1
aiσ(i)
= ∑
σ∈Pn
sgn(σ)a1σ(1)a2σ(2)· · ·anσ(n) (116)
• 例
2次の正方行列
Aˆ= (
1 2 0 1
)
(117)
とする.
このとき
• 成分はa11= 1, a12= 2, a21= 0,a22= 1
• 2次の順列はσ= (σ(1) σ(2)) = (1 2)及びσ′ = (σ′(1)σ′(2)) = (2 1)の二つがあり,その全体の集合P2 は{σ, σ′}である.
Aˆの行列式は
|Aˆ|= sgn(
( 1 2
)
)a11a22+ sgn(
( 2 1
) )a12a21
= sgn(
( 1 2
)
)1×1 + sgn(
( 2 1
)
)2×0 (118) (119) 後で定義するがsgn(1 2) = 1, sgn(2 1) =−1である. 結果として,
|Aˆ|= 1×1×1 + (−1)×2×0 = 1 (120)
4. 順列σの符号sgn(σ)の定義 (a) n次の順列
i. n次の順列1からnまでの数,
1,2,3, . . . n (121) を任意の順番に並べたもの
σ= (
σ(1) σ(2) σ(3) . . . σ(n) )
(122) と表し,それを 順列 と呼ぶ.
• 例2次の順列
σ= (
2 1 )
(123) この場合σ(1) = 2,σ(2) = 1である.
• 例3次の順列
σ= (
3 1 2 )
(124) この場合σ(1) = 3,σ(2) = 1,σ(3) = 2である.
ii. n次の基本順列
1,2,3, . . . n (125) をその順番に並べた順列
σ= (
1 2 3 . . . n )
(126) は特別に 基本順列 と呼ぶ.
• 例2次の基本順列
σ= (
1 2 )
. (127)
• 例3次の基本順列 σ=
(
1 2 3 )
. (128)
iii. 順列の転位数 与えられた順列
σ= (
σ(1) σ(2) σ(3) . . . σ(n) )
(129) に対して,
i < j かつ σ(i)> σ(j) (130) となるiとjの対の数を 転位数 と呼ぶ. 転位数が偶数の順列 を 偶順列,奇数の順列を 奇順列 と呼ぶ.
• 例1 2次の順列
σ= (
1 2 )
(131) の場合 σ(1) = 1< σ(2) = 2であるため転位数は0であ る. この順列は偶順列である.
• 例2
σ= (
2 1 )
(132) の場合 σ(1) = 2> σ(2) = 1であるため転位数は1であ る. この順列は奇順列である.
• 例3 3次の順列
σ= (
3 1 2 )
(133) の場合 σ(1) = 3 > σ(2) = 1, σ(1) = 3 > σ(3) = 2, σ(2) = 1< σ(3) = 2であるため転位数は2である. この 順列は偶順列である.
• 例4 3次の順列
σ= (
3 2 1 )
(134) の場合 σ(1) = 3 > σ(2) = 2, σ(1) = 3 > σ(3) = 1, σ(2) = 2> σ(3) = 1であるため転位数は3である. この 順列は奇順列である.
iv. 順列の符号
順列σの 符号sgn(σ)は以下の順列の関数である.
sgn(σ) = {
1 σが偶順列
−1 σが奇順列 (135)
• 例 2次の順列
σ= (
1 2 )
(136) は偶順列であるためsgn(σ) = 1
σ= (
2 1 )
(137) の場合奇順列であるためsgn(σ) =−1
• 例 3次の順列
σ= (
3 1 2 )
(138) の場合偶順列であるためsgn(σ) = 1である. 3次の順列
σ= (
3 2 1 )
(139) の場合奇順列であるためsgn(σ) =−1である.
(b) n次順列の集合Pn
n次の順列すべての集合をPnと表す.
またσがPnに属するとき,
σ∈Pn (140)
と表す.
• 例2次の順列の集合
P2= {(
1 2 )
, (
2 1 )}
(141)
• 例3次の順列の集合
P3= {(
1 2 3 )
, (
2 1 3 )
, (
3 2 1 ) ( ,
1 3 2 )
, (
2 3 1 )
, (
3 1 2 )}
(142) である. また, 3次の順列
σ= (
3 1 2 )
(143) はσ∈P3であるが, 2次の順列
τ = (
1 2 )
(144) ははτ ̸∈P3 である.
5. 行列式の例
• 2次正方行列
Aˆ= (
1 2 0 1
)
(145)
の行列式は
Aˆ= sgn((1,2))a11a22+ sgn((2,1))a12a21 (146)
= sgn((1,2))1×1 + sgn((2,1))2×0 (147)
= sgn((1,2))1 (148)
= 1×1 = 1 (149)
• 3次正方行列
Aˆ=
1 2 1 0 1 2 0 2 1
(150)
の行列式は
Aˆ= sgn((1,2,3))a11a22a33+ sgn((2,1,3))a12a21a33 + sgn((3,2,1))a13a22a31+ sgn((1,3,2))a11a23a32
+ sgn((2,3,1))a12a23a31+ sgn((3,1,2))a13a21a32 (151)
= sgn((1,2,3))1×1×1 + sgn((2,1,3))2×0×1 + sgn((3,2,1))1×1×0 + sgn((1,3,2))1×2×2
+ sgn((2,3,1))2×2×0 + sgn((3,1,2))1×0×1 (152)
= sgn((1,2,3))1 + sgn((1,3,2))4 (153)
= 1×1 + (−1)×4 =−3 (154)